「農政の憲法」見直し ここが大問題

 「食料・農業・農村基本法」は、政策の理念や方向性を示す故に「農政の憲法」に当たるもので、その制定や見直しには、十分な現状分析や検証、議論が必要です。
 この観点も含め、今回の基本法見直しの課題や問題点を概観します。


問題① スケジュールが拙速
【前回】旧農業基本法制定から30年後の1991年に見直し検討に着手。農林水産省下の会議体での議論と「報告」を受け、総理の諮問機関「食料・農業・農村基本問題調査会」を総理府に設置。
 その後、約1年半、50回超の調査会・部会などで検討を重ね、着手後、実に 約8年の歳月を掛け、法案の閣議決定にこぎ着けました。

【今回】2022年9月に大臣が「食料・農業・農村政策審議会」に見直し議論を諮問し、「基本法検証部会」を設置、10月の第1回以降、翌年5月までわずか計16回の部会で最終答申。提起から法案閣議決定まで わずか2年で、「中間取りまとめ」後のパブコメや地方意見交換会での意見が最終的な「答申」に反映されることもほとんどなく、拙速感が否めません。また、与党、官邸、農水省の関係が不明確な中での結着には違和感が拭えません。

問題② 検証が不十分
 諮問内容は、「・・政策の 検証及び評価並びに・・見直しに関する基本的事項」だったにもかかわらず、農業者の減少や高齢化、農地の減少など生産基盤弱体化の要因分析や施策効果などの検証が見えず、中途半端な印象を拭えません。

問題③ 法案の骨格や方向性が不明確
 「価格により所得確保を図るという価格政策の考え方を見直し、価格形成は市場に任せ、所得の確保は政策に委ねる」と明示していた現行法の柱を、どう見直すかが全く不明のまま、所得確保策として「合理的な価格形成」だけを強調しすぎているのは大問題です。

生産継続可能な所得の実現と自給率向上が必要
  地球規模での気候変動や国際情勢の不安定化などで、世界の食料事情が深刻化する中、これまで以上に国内の農業生産の増大こそを「食料安全保障」の根幹に据える必要があります。
 そのためには生産継続可能な所得の実現により、持続的で豊かな農業・農村を作る必要があり、これまで何度も提案している、農地維持や農業・農村の多面的機能への支援を含む、欧米並みの「直接支払い制度」の実現や自給率向上などを明記する条文修正などを粘り強く求めて参ります。

関連記事

アーカイブ

おすすめ記事